『死刑』森達也
森達也さんの『死刑』を読んだ。大変わかりやすく書かれていて、押し付けがましくないところが、本当にすばらしいと思う。死刑制度に対して、森さん自身が、廃止論者や、存置論者、死刑確定囚、刑務官、被害者遺族、多くの『死刑』に関係する人たちと、関わりながら、悩み考え、そして最後に、彼自身の結論を述べる。
- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 単行本
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本の中では、光市母子殺害事件の本村洋さんが、森さんに宛てた、手紙の内容が一部紹介されていて、私の彼に対する偏ったイメージがあることに気づかされた。自分の妻と子を殺した犯人が死刑に処されることを強く求めながらも、一方で彼は死刑と言う制度に対して、思い悩んでいるのだという。メディアでは、彼が死刑を強く求める姿しか、伝えられなかった。私は知らなかった。私は、どちらかといえば、死刑廃止の立場に近いのだと思うけれど、最後のほうに出てくるこの本村さんの言葉がまた私を混乱させた。でも、私は混乱しなくてはならないのだと思った。
他者の感情や立場に対する想像の努力を、絶対の理解は無理だということを承知しながらも続けていくことが、いかに大切か、いつも森さんは教えてくれる気がする。